HISTORY - VUP マウスガード誕生までの物語 -

きっかけは7年ぶりの再会

かにえ歯科を開業し10年。昼は仕事、夜は趣味のゴルフと、凝り性の私はどちらも全力で取り組んで、どちらも自他共に認められる、評価を得ていた頃に患者としてやって来たのが本多君でした。
彼は実に7年振りに来院。
今迄何してたの? 今は何してるの? と近況の雑談をしていると
「ボートレーサーやってます」との返事。
私はボートレーサー、いわゆる競艇という分野に対する知識に明るくなかったため、最初はその意味すら分かっていませんでしたが、話をしていく内に自院から車で30分程度の蒲郡競艇場でレースをしていることを知り、応援に来てくださいと誘われ、休診日に時間を作り知人と競艇場に見学に行くこととなった。

どうせレースを見るならと、財布の中身全部を本多君と、同じく当院に通院して頂いてた浅野選手の2人に投資。結果はご来院時に質問していただければお話します(笑)
初レース観戦は、スピード感や巻き起こる水しぶき、エンジン音、派手なアナウンス、来場者の熱い声援など、様々な現場でしか味わえない臨場感で興奮したことを覚えています。

後日、彼らが来院した際に話を聞いてみたところ、ボートレーサーという職業は、転覆すると死に至る危険性もあること、体重が増えると艇(ふね)のスピードが落ちるので、減量や食事制限が必要なこと、僅かなスタートの良し悪しが着差になること、スタートでフライングすると1ヶ月休みになりその間は無収入なこと、プロペラ調整やモーター整備が必要なこと、筋量アップよりバランストレーニングが重要なことなど、勝負を左右する要素が実に多岐にわたる事がわかり、大変な職業だという印象をうけました。
しかし、「やればやっただけ稼ぎが上がる」「リスキーだが、レーサーになった事を後悔してない」「なって良かった」と目をキラキラさせながら話す彼らにとても惹かれたことを覚えています。

ボートレーサーのマウスガード

ボートレーサーのマウスガード

ボートレーサーのマウスガード

ボートレーサーのマウスガード

スポーツ歯科という選択

趣味でも全力の私は毎日ゴルフ練習、筋力トレーニング、ランニングとカラダづくりを続け、寝るのは夜中2時過ぎという日常を過ごしていました。
しかし、ある頃から右膝の痛みに悩まされ、トレーニングや練習をコントロールしても完治せずに苦しんでおり、そんな時期に若手プロゴルファーのタイ合宿に参加する機会があり、そこで出会った若手の師匠である湯原プロが、自分に向かって言った一言が、今でも忘れられないでいます。
「君はアマチュアなのに、そんなにゴルフを一生懸命やって何になるんだ?」

答えに窮しました。
他の参加者はツアー優勝を目指すプロゴルファー、その指導者や若手をサポートするスポンサー。自分はそのどれにも当てはまらない。
浮いた人間だった。心の奥底の悩みを見透かされた気がしました。

今度、タイ合宿に参加するのなら、プロゴルファーの役に立つ存在でありたい。
帰国後考えた末の答えが、スポーツ歯科という選択肢でした。
スポーツを行うアスリートにとって、噛み合わせの良し悪しが非常に大事だと言う事に着目し、噛み合わせ治療で有名な丸山先生との出会い、そして多方面の勉強会に参加して、噛み合わせの重要性を認識、理解を深めて行くことに没頭する。
自分自身の噛み合わせが非常に悪い事に気づき自身の矯正治療も行う事にしました。
そうして矯正治療を始めると、咬むと歯が痛くて全く食べれずに3カ月で7キロ体重が落ち、常に首の痛み、左手のしびれがある中で、夜も熟睡出来ないといった状況が続き、噛み合わせは全身に影響があることを実感しました。

噛み合わせの前後左右の差は、ケガをしやすさであったり、外傷などの回復への影響が現れたり、またメンタルにおいても不安定になりやすいという見解もあります。
本来、噛み合わせの悪い選手は全員治した方が良いと考えていますが、矯正完了までに2、3年かかるという時間的なコスト、矯正する事で起こる全身変化で調子を崩していくリスクを鑑みると、即効性と低リスクというメリットのあるマウスガードへと、自分自身興味が出てくるのは、自然な流れであったと思います。

そこで、趣味の分野で繋がりのあるプロゴルファーにマウスガードを提案し、筋トレや練習で使ってもらえる様にしたり、合宿や食事会で歯の大事さを伝える事で彼らの役に立つのではないかと考えました。
しかしながら、実際トレーニング中となるとマウスガードが邪魔であったり、面倒であったりと、長時間ハードなトレーニングを行う環境では装着しながら続けるのは難しく、効果を実感し、2個目を作る事を望む声は出てきませんでした。
ゴルフという競技は試合ではマウスガードを装着した場合は失格になるため、装着している効果を実感出来ないのだろうと感じ、次第に合宿で講師として招かれた際も、徐々に噛み合わせの事よりも、歯のメンテナンスの大事さを伝える事となり、無難なお題に変わっていきました。

スポーツ歯科として、ゴルファーの役に立ちたいと思い、取り組んでみたものの、思った成果が上げられず無力さを感じる中、競艇選手はマウスガードが古くなったから、新しく作って欲しいとリクエストをくれました。

マウスガードの必要なスポーツ

ゴルファーは来ないのに何故レーサーは必要だと感じてくれるのだろうか?
レーサーはレース中と練習中、ボートに乗る僅かな時間しか使用しない事からさほど面倒だと思ってないこと。
ゴルフとは違い圧倒的に不安定な水の上で行われるボートレースは艇をコントロールするバランス力の違いが転覆回避などの大きな成績の差になるため、よりマウスガードの効果がわかりやすいこと。 筋肉での補助的なごまかしが効きづらいこと。
このような考察から、マウスガードはレーサーのお役に立てるはずだと確信しました。

マウスガードへのこだわり

マウスガードの効果は、簡単に言えばパワーアップ、柔軟性のアップ、バランス力のアップであるが、効果のある人とそうでない人がいると言われています。
しかし実際には、効果がない人とは、マウスガードとの相性が合っていないのではないかと考えています。
ボクシングやラグビーなど外傷から守るための義務化されたプロテクターとしての意味合いの強いマウスガードとは異なり、パフォーマンスをあげるためのマウスガードは個々人がそれぞれ持つ特性に依存しています。
例えば噛み合わせのポジション。
下顎の位置が骨格上の理想のポジションと個人のパフォーマンスアップが測れるポジションとが必ずしも一致しないことがあります。
下顎は約1kgの重さがあり、下顎の位置が間違って作られたマウスガードは、パフォーマンスが落ちることがある。そのため、人によって効果の良し悪しが出てしまうのだと考えられるからです。マウスガードは当たりハズレが出てしまうのはこのためです。

現在、主流として流通しているマウスガードの製作工程は、歯型を取り、それを元に歯の模型を作り、歯科技工士という資格者がマウスガードを作成するという流れですが、そこには細かなパーソナルデータは存在しておらず、あくまで「歯」から読み取れる情報が存在するのみです。
個人の詳細なデータを判断することは口腔内を診察できる歯科医しか出来ない事から、私は歯科医師がマウスガード作成するメリットがあると考えています。
当たりのマウスガードを作れるのは歯科医師だと思うのです。

VUPマウスガード

当院では、個々人の細かなデータを計測し、骨格やカラー診断など、ご自身に合った最良のマウスガードの提案、製作をするため量産が難しく一日に生産できるマウスガードは2つまでとさせて頂いています。
そのため、現在はレーサーに限定し、診療と製作のみの予約を受けさせて頂いております。
VUPとはVICTORYの可能性をUPするという意味で命名いたしました。
レーサーの勝率に少しでも貢献できるようにと願いを込めて作っているマウスガードです。

ただ、カッコイイ、オシャレではなく
より安全に、より快適に艇をコントローラブルに、本来の自身のパフォーマンスを発揮出来る。パワー、柔軟性、バランス力が上がり、成績が上がりやすくなる。
それを、マウスガードを作る過程の中で実感して頂ける。

体重を増やせないレーサーには、筋力アップのトレーニングよりも即効性があると自負しています。少しでも成績を上げたい、勝負へのこだわりを持ったレーサーの来院をお待ちしております。